さて、司法書士としてどの様な登記を申請すべきでしょうか?
【 事 例 】
1.表題登記のみがされている昭和60年2月1日新築のY自治会(権利能力なき社団)所有の集会所がある。
2.表題部所有者はY自治会の代表者たるA及びB、持分は各2分の1である。
3.Bは平成2年2月1日に死亡しておりその法定相続人はCである。
4.平成2年3月1日亡Bの後任者としてDが選任された。
5.Y自治会は平成21年3月2日地縁団体として市長の認可を受けた。
6.登記申請は平成21年3月19日オンライン庁へ書面により、登記手続きに非協力的な者はいない。
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■関連知識■
●団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にも関� ��らず団体そのものが存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理その他団体として主要な点が確定している場合、権利能力なき社団として扱われる(最判昭和39年10月15日)
●権利能力なき社団の有する権利は構成員に総有的に帰属するのであるから、社団自体は登記請求権を有しない(最判昭和47年6月2日)
●信託登記の受益者としても権利能力なき社団は登記できない(昭和59年3月2日民三1131号回答)
●地方自治法第260条の2第1項の「地縁による団体」と認められれば、団体名で登記の申請はできる。(平成3.4.2民事三第2245号)
●権利能力なき社団は抵当権などの債務者としては登記できる(昭和31年6月13日民甲1317号回答)
●不動産工事の先取特権に は物上保証のような性格はないから、権利能力なき社団を債務者とする不動産工事の先取特権保存登記を申請することはできない(登記研究 第596号87頁)
●人格なき社団の不動産について、登記名義人が数名の代表者A、B、C3名の共有であるところ、そのうちの1人A単独の名義とした場合、B、C持分全部移転による登記申請の登記原因は「委任の終了」とする。(昭和41.4.18民事甲第1126号参照)
●人格なき社団の代表者が変更した場合の登記原因の日付は、新代表者が就任した日である。(登記研究 第450号)
●権利能力なき社団の代表者が死亡し、その後任者が選任された場合の「委任の終了」による所有権移転の登記原因の日は、後任者が選任された日である。(登記研究 第573号124頁)
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●法人格のない社団の代表者の変更により「委任の終了」を登記原因とする所有権移転登記がなされている不動産につき、「相続」を原因とする所有権移転登記の申請は受理すべきではない。(登記研究 第459号98頁)
●法人格のない社団の代表者名義で登記されていた不動産について、代表者が死亡したことにより相続人名義に相続登記がされている場合、相続開始後に新代表者が就任したときは、相続登記を抹消した後、死亡した旧代表者が登記義務者、新代表者が登記権利者となって「委任の終了」を登記原因として所有権移転の登記を申請すべきである。(登記研究 第518号116頁)
●権利能力なき社団の代表者の個人名義で 所有権の登記がされている不動産につき、代表者の死亡後に社団が地方自治法第260条の2第1項の認可を受けた場合、現在の登記名義人の相続人全員を登記義務者、登記原因を「委任の終了」、その日付を認可の日として、直接認可地縁団体へ所有権移転の登記を申請できる。(登記研究 第563号127頁)
●共有名義で登記された不動産について共有者の1人から認可地縁団体への登記原因を「委任の終了」とする持分移転登記を申請することができる。(登記研究 第581号145頁)
●AからBに相続による所有権移転登記のされた不動産について、BからA死亡後に認可された地縁団体Cに「委任の終了」を原因とする登記申請があった場合、受理できる。(浦和地方法務局権利登記官等打合せ会における� �議事項(平成7年7月24日開催))
●権利能力なき社団である地縁団体(町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体)が、売買等により不動産を取得し、その後、所有権移転の登記申請時までに地方自治法第260条の2第1項の市町村長の認可を受けている場合には、不動産を取得した権利能力なき社団である地縁団体と認可を受けた地縁団体とに同一性が認められるのであれば、直接認可地縁団体名義に所有権移転登記をすることができる。(平成16年1月21日民二第145号民事局長回答)
注 社団の代表者個人名義の登記を経由する必要はない。
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●代表者の個人名義で所有権の登記がされている不動産につき、代表者の死亡後に社団が地方自治法第260条の2第1項の認可を受けた場合、現在の登記名義人の相続人全員を登記義務者、登記原因を「委任の終了」、その日付を認可の日として、直接認可地縁団体へ所有権移転の登記を申請できる。
(登記研究 第675号109頁)
●法人格のない社団が所有する農地について、法人格のない社団の代表者の変更に伴う委任の終了を登記原因とする所有権移転登記の申請の場合は、法人格のない社団代表者個人名で登記されていても、実体上の権利者は社団構成員全員であり物権の変動は生じないことから、農地法3条の許可書は不要である。(昭和58.5.11民事三第2983号)
※通常の売買を委任の終了と偽って所有権移転登記の申請をするのは脱法行為とされる。
●権利能力なき社団の代表者名義で登記されている不動産につき、当該代表者の死亡後当該社団が第三者にその所有権を譲渡した場合、現在の代表者名義に所有権移転登記をしてから第三者名義に所有権移転登記をするべきである(平成2年3月28日民三1147号回答)。
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『【事例】についての検討事項』
認可地縁団体名義で直接所有権保存登記を出来ないものか。
もし可能であれば所有権移転分(1000分の20)の登録免許税を節約できることになる。
認可地縁団体は74条1項1号後段の「その他の一般承� ��人」に該当するか否かが論点になると思われる。
所有権保存登記の申請適格者は不動産登記法74条において限定列挙されている。※下記参照
「その他の一般承継人」の定義は「ある者が他の者の権利義務のすべてを一体として受け継ぎ、法令上その権利義務に関して前主と同じ地位に立つこと」である。
典型例としては合併による存続会社(又は設立会社)のような前主の包括承継人が該当する。
平成3年4月に地方自治法が改正され、町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(認可地縁団体)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利義務の帰属主体となることができるようになった。
レコードセンターのものです
この改正以前は自然人たる個人名義で(最高裁見解:代表者の個人名義・構成員の個人名義又は構成員全員の共有名義)登記せざるを得ないのが実情であったが、認可地縁団体名義での登記が許容されるに至った。
しかし、自然人たる個人から認可地縁団体への委任の終了による所有権移転登記が本来的な「承継」を意味するのではなく、単に団体名義で登記が可能になっただけである。
実体は個人名義で登記されている時からずっと所有者は団体そのものであり、その所有形態は構成員全員の総有状態(使用収益権を有するが処分権はない状態)であるに過ぎない。
実体上、前主の権利が消滅して後主に権利が承継されたわけではなく、74条1項1� ��後段の「その他の一般承継人」には該当しないものと思われる。
よって直接認可地縁団体名義で所有権保存登記をすることはできず、所有権保存登記→所有権移転登記(委任の終了)の流れが妥当であろう。
※(第74条)
所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
1項
一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
二 所有権を有することが確定判決によって確認された者
三 収用(土地収用法 (昭和26年法律第119号)その他の法律の規定による収用をいう。第118条第1項及び第3項から第5項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
2項
区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。
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■申請例■
◎A及び亡B名義で所有権保存登記を経た後、
直接認可地縁団体名義への所有権移転登記(共有者全員持分全部移転登記)を申請する。
●認可前に代表者などの個人名義で表題登記のみがされている場合、その者の名義で所有権保存登記をした後に認可地縁団体への所有権移転登記をするべきである(登記研究521-166頁)。
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(1件目)
登記の目的 所有権保存
所 有 者 何市何町一丁目1番1号
持分2分の1 A
何市何町一丁目1番1号
持分2分の1 亡B
何市何町一丁目1番1号
上記相続人 C
添付書類
住所証明書 相続証明書 代理権限証書
平成21年3月19日 法74条1項1号申請 ○○法務局○○出張所御中
代 理 人 何市何町一丁目1番1号
司法書士 補 正 無 男
連絡先の電話番号×××−×××−××××
課税価格 金1,000万円
登録免許税 金4万円
不動産の表示
(省 略)
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(2件目)
登記の目的 共有者全員持分全部移転
原 因 平成21年3月2日委任の終了
権 利 者 何市何町一丁目1番1号
Y自治会
代表者 A
義 務 者 何市何町一丁目1番1号
A
何市何町一丁目1番1号
亡B相続人C
添付書類
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書
住所証明書 相続証明書 代理権限証書
平成21年3月19日申請 ○○法務局○○出張所御中
代 理 人 何市何町一丁目1番1号
司法書士 補 正 無 男
連絡先の電話番号×××−×××−××××
課税価格 金1,000万円
登録免許税 金20万円
不動産の表示
(省 略)
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